基本理念「戮力協心~次世代につながる未来へ~」
はじめに
1949年、戦後の荒野の中、日本青年会議所は「新日本の再建は私たち青年の仕事である」として、日本の青年会議所運動をスタートさせました。「修練」「奉仕」「友情」の3つの信条のもと、「明るい豊かな社会」の実現を理想として、より良い社会づくりをめざして、社会貢献や行政改革等の社会的課題に積極的に取り組んでいます。昭和、平成、令和と時代が変わっても、先輩諸兄姉よりその信念は引き継がれ、今なお、積極的な活動・運動が展開されています。私たち、一般社団法人宝塚青年会議所は、1966年に設立し、2025年に創立60周年を迎えます。先輩諸兄姉が築き上げ、信頼を獲得し、発展させてきたからこそ、私たちは宝塚の地で様々な方々の協力を得ながら活動・運動ができます。先輩諸兄姉に改めて最大の感謝の意を表すとともに、その歴史を受け継ぎつつも、変わりゆく時代の中で変化を敏感に捉えて、新しい未来を創りさらに60年残り続けるような組織にしていかなければなりません。
本年度、宝塚青年会議所は「戮力協心~次世代につながる未来へ~」をスローガンとして運動してまいります。戮力協心は、全員の力を集結して、心を乱さず、調和をはかり、一致団結して事を成すことを意味しています。先輩諸兄姉は積極的な活動・運動を展開する中で、より良い宝塚のまちづくり、ひとづくりを目指すために、常に力を合わせて事を成してきました。また、地域のリーダーとして、リーダーシップを発揮し、事業を創造してきました。私たちは、その歴史を理解し、受け継ぐことが重要ではありますが、先輩諸兄姉が当時それらを生み出した時の、革新や戮力協心を忘れてはいけません。歴史は変化をさせずにそのまま受け継ぐものではなく、時代の変化に合わせて常に変化し、継承していくものです。私たちが継承すべきは、その時の想いや組織力であり、現役会員が一丸となって、活動・運動に取り組み、本年も、また次世代につながる未来をも創造できるように挑戦していきます。
日本国内の人口が減少しており、青年の人口も年々減少しております。宝塚青年会議所においても、人口減少と同じく、会員数は減少の一途をたどっています。このままでは、先輩諸兄姉の歴史を継承する前に、団体としての存続が危ぶまれる極めて厳しい状況にあります。団体を存続させ、次世代につなげ、宝塚の地から「明るい豊かな社会」を実現するためには、会員の拡大と多様性が必要です。メンバーの呼び込みによって会員が継続的に拡大することと組織内に様々な個性や経験を保有している人が集まり続けることは最優先課題であり、本年度はすべての委員会を拡大委員会としたうえで、さらに拡大実行委員会を設け、メンバー全員で会員拡大に取り組みます。また、活動・運動においても地域の方々に開かれた形とすることで、宝塚青年会議所が信頼される組織となるべく邁進していきます。
未来に向けた会員拡大の推進
私たちは、「明るい豊かな社会」の実現を目指して活動・運動を行っております。まちづくり、ひとづくりに良い変化を起こすことのできる価値ある人財を地域に輩出する青年会議所にとって、会員拡大は、その根幹となります。青年会議所の理念や目的に共感して、共に活動・運動できる人財を一人でも多く増やし、地域の次世代の未来を考えることのできるリーダーに成長の機会を提供し、育成することが、私たちが次世代につなげる為の未来投資であると考えています。
社会の変化に柔軟に対応し、改革を起こし続けるためには、会員一人ひとりが輝きつづけられるような組織でなければいけません。輝く個性が調和し、幅広い人財が活躍できる組織であるためには、多様性を受け入れた人財の積極的な会員拡大を行うことが重要です。多様性とは、目に見えるような違いだけではなく、考え方が違う様々な人財が集まっていることを示しています。「明るい豊かな社会」を実現するには、様々な価値観が交わり、多くの人々に私たちの理念に共感していただく必要があります。そのためにも、各委員会と協力しながら戦略と行動指針を策定し、全員の力を集結し、一致団結して組織全体の共通の目標として意識を醸成して、組織的に会員拡大を推進します。
伝統と備えのあるまちづくり
私たちの住む、宝塚のまちには、宝塚歌劇、宝塚温泉、手塚治虫記念館、中山寺や清荒神をはじめとする歴史ある寺社仏閣、ケトロン祭や星下り大会式など伝統的な祭りなど先人から引き継いだたくさんの伝統があり、観光都市として有名です。また、過去に兵庫県農業試験場宝塚分場において宝交早生という品種のいちごを宝塚の地で生み出しており今なお家庭菜園で親しみのある品種となっております。しかし、近年は、観光都市や地域産業が盛んというイメージではなく、ベッドタウンとしての役割が大きくなり、古くからこの地にお住まいの方々と新しくこの地に住まれた方々が混在するまちとなっています。そのため、市民の共通の問題として、愛郷心が薄れており、宝塚が持つ伝統や地域産業について関心が薄くなっていると思います。
私たちもまちに関心を持ち、地域のリーダーとして、まちの魅力を発信し続けることで、まちや地域産業の活性化に寄与していくことが必要です。そのためには、多くの市民、行政、各種団体との協働が大切であり、各々がまちや地域産業の活性化に取り組むのではなく、宝塚全体として協力し、まちや地域産業の魅力を伝え続け、関心や認知を高めることで、愛郷心や地域価値を高めていけると信じております。
多くの市民、行政、各種団体と協働している事業として、一昨年復活した宝塚サマーフェスタの開催に携わっております。先輩諸兄姉がご尽力された伝統ある宝塚まつりを引き継ぎ、継続して開催されている宝塚サマーフェスタを夏の風物詩としてより一層充実させ、活気があり魅力と笑顔であふれるお祭りとしていくことで市民の愛郷心が高まると信じています。
また、2019年に「災害時のボランティア活動支援に関わる協定」を締結しております。近年は未曾有の災害が多くあり、昨年度は国内では能登半島地震、国外では台湾で大きな地震が発生しております。宝塚市では、南海トラフ地震の30年以内の発生確率は70%〜80%であり、震度6弱の地震が見込まれております。それらの災害に備えるべく、市民、行政、各種団体とのつながりを深め、準備をしていく必要があると確信しております。
最後に、伝統を継承していく為には、当たり前の事を当たり前に実施するのではなく、できない事にも挑戦し、時代に合わせた変化への対応も必要だと考えます。過去と現在の調和をはかり、伝統を重んじながらも、伝統を受け継ぐための挑戦が必要であり、地域の活動に参加し、その中での課題を発見し、改革を実行することを大切にします。自分一人でもできる事をするのは大切ですが、自分にはできない事でも、仲間と共に懸命に取り組み、全員の力を結集することで、無限の可能性が生まれ、限界を突破し、良い変化が生まれ、自分自身の成長と共に、まちの発展につながります。これこそが、青年会議所の活動・運動の本質ではないかと考えています。私たちが地域と関わりを持ち関係構築をすることができるのは、地域に必要とされる団体として社会に貢献し続けてきた先輩諸兄姉の実績があるからであり、支えてくれる家族や会社の協力があるからだという感謝の気持ちを決して忘れてはなりません。感謝の気持ちを忘れず青年会議所運動に邁進し、「明るい豊かな社会」をつくりあげるために、私たち会員一人ひとりが地域社会の一員であることを自覚して、市民、行政、各種団体と連携して魅力あるまちの創造に貢献します。
地域に信頼されるリーダーの育成
私たちは「明るい豊かな社会」を実現するために日々、活動・運動を行っております。その活動・運動を行っているのは、私たち会員一人ひとりとなります。地域社会を活性化する為には、強いリーダーシップを発揮し、地域から信頼を得て、物事を実行する必要があります。青年会議所においてのひとづくりとは、指導力開発、人間力開発を意味します。リーダーとしての指導力、組織運営能力はもちろんのこと、自立した人間として個の力を発揮する人間力も必要であるということです。リーダーは一人で実現できず、どこかの組織や集団に属し、他者との協力によって発揮できます。組織や集団が機能する為には、人々に信頼され中心となって先導するリーダーは必要であり、円滑に進むか否かはリーダーの指導力、人間力の質に起因します。
その質を高めるためには、まずは、組織内で一人ひとりが自らの指導力や人間力を高め、地域から信頼される青年経済人となる為に自己研鑽に励んで参ります。次に、地域に出ていき、地域の方々と交流し、切磋琢磨することで、組織を超えた指導力、人間力を養います。
また、次世代につながる未来の実現には、青少年の育成も重要です。先輩諸兄姉が繋いできた、青少年セミナーも今年で第50回を迎えます。歴史を継承しつつも、将来の宝塚を担う青少年の明るい未来の実現に向けて、時代の変化に合わせ、メンバーの成長と子どもたちの育成の機会として青少年セミナーを開催してまいります。同世代の仲間との交流を通じて、子どもたちの道徳心や協調性を育み、普段宝塚の地では体験できない体験の機会を提供して、多種多様な価値観に触れることで、未来につながる新しい価値観の醸成に寄与できると確信しております。
最後に、「明るい豊かな社会」の実現の為には、まちづくりだけやひとづくりだけを実施したらいい訳ではなく、相互に深く関係しています。ひとが学び、成長し、まちに入り込んで地域活動を行うことが、宝塚の地域の存続、発展に寄与すると確信しております。また、私たちが将来を担う子どもたちとセミナーを通して触れることで、会員一人ひとりの成長につながり、子どもたちは経験、学び、成長する機会となり、双方の成長が相乗効果を生み、宝塚を支える人々の明るい未来の実現ができると信じております。
発展する組織の実現
私たち宝塚青年会議所という団体が未来に向けて発展し、事を成し遂げるためには、全員の力を集結して一致団結できる組織を構築することが必要です。そのためには、組織運営力や広報の強化を行うとともに、青年会議所の歴史やルールを知ることも重要です。
組織運営力としては、調査力、分析力、企画力、行動力、評価力の強化を行うと共に、ルールの徹底、会員の定着、歴の浅い会員へのフォローを実施します。特に、報連相や期限の徹底を図っていきたいと考えており、会員一人ひとりの時間や機会を使っていることを自覚して、活動・運動を実施してほしいと思います。これらを徹底することで、組織力が向上し、組織の信頼性の向上や組織内での協調性が生まれるとともに、より良い会議、活動・運動が実現できると確信しております。時代の変化に合わせて、会議や議案構築、情報提供のあり方も変化しておりますが、デジタルをうまく活用しながら、歴史は重んじ、新しい未来に向けて、新旧が融合した組織運営を行ってまいります。
広報活動としては、多様な方々に情報提供できるように、ローカルメディアも活用しつつ、SNSも活用して情報提供を行ってまいります。より多くの方に情報を届けるためには、年代、性別、属性、などのアプローチしたいターゲットを考えた上で、効果的にターゲットの方々に対して、目に留まる情報媒体の選定、情報発信の方法を考える必要性を感じております。私たちの活動・運動を一人でも多くの方々に届けるべく、前広に情報発信を行い、私たちが実施する魅力的な活動・運動や会員一人ひとりが輝く姿を発信することで、地域の方々が宝塚について興味を持ち、さらに宝塚青年会議所に興味を持てるようにしていければと考えています。これらの発信によって、賛同者や応援者が増え、コミュニケーション機会が多く生まれることで、会員一人ひとりの成長に寄与できると確信しております。
最後に、発展する組織とは会員一人ひとりが尊敬、尊重し合い、お互いが協力し合い、一丸となっている状態でかつ、一人ひとりの個が輝いている状態を指していると考えております。また、歴史を理解し、ルールに即して組織運営されていることも重要です。そのような組織を実現することで、私たち宝塚青年会議所が更なる発展を遂げ、会員一人ひとりの成長も促し、それらを通して地域貢献や次世代の組織発展へと繋がっていくと確信しております。
創立60周年
本年度、宝塚青年会議所は創立60周年という大きな節目の年を迎えます。創立60周年式典は、先輩諸兄姉、行政、各種団体への感謝の気持ちを伝える機会であるとともに、今後も感謝の気持ちを忘れず真摯に次世代につながる未来に向けて青年会議所の活動・運動に取り組む決意の場でもあると考えています。
宝塚青年会議所では、青少年セミナーを49回に渡り継続開催しています。この青少年セミナーは都度開催地を変えながら、会員一人ひとりの指導力開発や人間力開発を行うとともに、子どもたちが多様な価値観に触れる機会となっております。また、宝塚まつりを引き継いだ、宝塚サマーフェスタも長きに渡り継続しており、まちづくりに貢献しております。これらの事業が継承されているのは、当時の想いを会員一人ひとりが理解し、その時々に必要なことを考えて盛り込み、多くの人々との協力や調和を生み出すことで毎回内容を進化させながら継続し続けております。これらの事業が始まった時に、未来に続く事業を創りたいと当時の会員一人ひとりは考えたことでしょう。本年度は、創立60周年という大きな節目でもある為、会員一人ひとりが、多くの人とつながり、先輩諸兄姉、行政、各種団体の方々と協力し、調和を生み出し、未来につながる第一歩として新しい絆を創る60周年記念事業を創造することで、次世代に引き継ぎます。
おわりに
敬愛してやまない先輩諸兄姉の弛まない努力と熱い思いによって一致団結して築き上げてきた歴史と伝統を継承するとともに、時代に合わせた変化を受け入れることによって、地域に根差し、常に必要とされる団体として活動・運動を展開していきます。
本年度を支える会員一人ひとりに感謝と敬意を表すると共に、一年間を通して、会員一人ひとりの力を集結して、心を乱さず、調和をはかり、一致団結して事を成せることを期待しております。2025年は大阪・関西万博もあり、社会として劇的な変化が生まれる可能性を秘めている年ではありますので、時代に合わせた変化を許容し、未来につながる組織づくりを行ってまいります。
最後に、60周年という大きな節目の年に青年会議所の活動・運動に邁進できることに心から感謝するとともに、宝塚のまちの益々の発展の為に未来につながるように自信をもって活動・運動をしていきましょう。
第60代理事長 橋場 諭